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ハエトリグモはこんなクモ

 クモというと、知らない人はいないと思いますが良いイメージをもっている人は多くないかもしれません。でも実は、クモという生き物は知れば知るほどに奥が深く面白い生き物なのです。ここでは僕が専門とするハエトリグモ (以下「ハエトリ」) について紹介します。
目が大きく、視覚が発達
 他のクモと比べると、なんと言ってもハエトリの一番の特徴は目です。だいたいのクモは目が 8 つありますが、ハエトリは正面にある 2 つの目がとても大きく、優れた視覚をもっています。このため、よく思い浮かぶクモのように網を張ったりせず、「目で見て飛びついて」エサの虫を捕まえることができます。画面の中のマウスカーソルを虫だと思って追いかけたりもします。
ハエトリの多くは 5 mm 前後、大きくても 1 cm を超える程度ですが、よく見るとこんな顔をしています。「ぱちくりおめめ」がたいへんかわいらしいですね。宇宙人やロボットも彷彿とさせます。この顔がハエトリのトレードマークです。
 目が良いことに関連しますが、虫やパートナーを目で見て探すため、よく歩き回ります。獲物を見つけた時や大きく移動したい時はぐっと脚に力をためてジャンプします。
活発に歩き回り、跳ねる
作者の撮影技術ではこれが限界でしたが (笑)、ものによっては体長の 20 倍もジャンプします。英語で「jumping spider」と呼ばれるのもうなずけます。つぶらな瞳と相まって、ぴょんぴょん飛び跳ねるしぐさはリスなどの哺乳類を思わせるものがあります。
 ハエトリは世界に約 5000 種、日本には 100 種ほどが知られていますが、その外見は実にさまざまです。丸っこいもの、平たいもの、細長いもの、果てはアリそっくりなものもいて、色や模様もまさに十人十色です。
色や形がさまざま
この写真はタイのハエトリたちです。見た目はいろいろですが顔はみんなハエトリの顔をしています。日本にはさすがに熱帯ほど派手な種類はそうそういませんが、それでもかなりバラエティ豊富なメンバーがそろっています。この多様性がハエトリの大きな魅力です。
 それからオスとメスで見た目が全然違う種類が多くいます。これもおそらく目が良いことに関係があり、「ぼくはオスですよ」「わたしはメスですよ」というのをお互いに目で見て確認するためだと思われます。写真はヤハズハエトリという同じ種のオス (左) とメス (右) です。オスが色が濃い種類が多いです。
 クモというと「毒グモ」が思い浮かぶかもしれませんが、人間に害のあるほどの毒をもったクモは本当にひとにぎりです。クモは生きた虫を捕まえて食べるので、ほとんどのクモが虫を殺すための毒はもっています。しかしこれで人間が大事に至ることはそうありません。ハエトリに関して言えば、噛まれることもまずありません。
かまない、毒はない
人畜無害です。むしろ名前の通り、ハエやカを捕まえてくれます (目に見えて減るほど捕まえてはくれない)。
 というわけでまとめると、つぶらな瞳でぴょんぴょん飛び跳ねるさまがチャーミングで、色とりどりで楽しく、さらに人間にもやさしいクモ、それがハエトリグモです。ちょっと大丈夫そうな気がしてきましたね!
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