採り方

 作者がハエトリを採集している方法を紹介します。クモ全般の採集法と考えてもらっても大きな間違いはないと思います。あくまで須黒流です。
ビーティング
 草木を棒で叩いて、落ちてくる虫を網などで受ける方法です。手っ取り早くたくさん採れますが、けっこう強く叩く必要があります。棒も網も何でも良いのですが、作者は網には「子ども用の骨が丈夫な傘」を使っています (グラスファイバー骨のもの、写真の時はまだ違います)。これはそうそう壊れず、コストパフォーマンス最強のビーティングネットと思います。ビニール傘は半日ともたずに壊れます。ハエトリ的には例えばススキの類の葉が厚く重なって垂れているところが穴場です。
スイーピング
 草木を網でかすめて、虫を掬い取る方法です。低茎草本や高木など、ビーティングの守備範囲が及ばないところで頼りになり、またビーティングよりも単位時間あたりに調査できる面積は広いと思います。こまめに確認していないと、しばらく網を振っている間に中でクモがダメージを受けてしまいます。
シフティング
 落ち葉や藁を篩 (ふるい) にかけて、間に潜む虫を落とす方法です。落葉層に住むネオンハエトリの仲間などを効率良く採れます。普通には採りにくいクモが他にもいろいろ採れて面白いです。篩は専用のものもありますが、園芸用のものやザルでも問題ありません。作者は平たいタイプの「野菜の水切りカゴ」を使っています。プラスチック製で、丈夫で錆びず洗うのも簡単です。
見つけ採り
 目で探して採るという最もシンプルな方法です。基本であり、この経験を積むことで、どの種がどんな環境にどんなふうに暮らしているかという情報をたくさん得ることができます。屋内外の目と手の届く範囲すべてが対象であり、一番「人によって採集成果が異なる」方法だとも言えます。一部の種はほとんど見つけ採りでしか採ることができません。作者は後述するスチロール瓶を使って採っています。いわゆる珍しいハエトリの狙い目としては、草の根際、藁の下、樹皮下などがおすすめです。
 
 
 採集中の写真を撮影・提供してくださった馬場友希さんにお礼申し上げます。
容器
 採集したハエトリを生きたまましまっておく入れ物です。これも何でも良いですが作者はスチロール瓶とピルケースを使っています。
 
 
 スチロール瓶はホームセンターで入手できます。片手で素早く開けられるのが便利ですが、それが災いして意図せぬ時に開いてしまう場合もあります。10 個くらいウエストポーチに入れておき、採ったハエトリはまずここに入れます。口が広いので逃げられにくいですが、これだとかさばるのでたくさん持っておくことができません。
 
 
 そこで、採ったハエトリを持ち帰る時にはピルケースを使っています。百円ショップで入手でき、いろいろありますがおそらく写真のものが最強です (村岡祐輔さん発案)。一番コンパクトにたくさん収納でき、蓋もゆるくありません。また、微妙な隙間のおかげで密閉されないので蒸れて死ぬ事故が起きにくいです。代わりに乾燥しやすいので、葉っぱや濡らしたティッシュで保湿する必要があります。捕獲の腕に覚えがあるならこれで直接採っても問題ありません。どれがどこで採ったものかわかるように、ラベルを貼るか蓋に直接書き込んでおきます。
 また、生きたままキープする必要がなく標本にしたいだけであれば、エタノールの瓶に直接入れていけばよいです。標本や薬品を保管する瓶の他、風邪薬 (ル〇等) の瓶や百円ショップのガラス瓶でも大丈夫です。割れにくく、アルコールで変形したりせず、かつ中が見えるものがベターです。1 本の瓶に複数の種・個体を入れることは問題ありませんが、「いつどこで誰が採った」というラベル情報が異なるものは一緒に入れてはだめです。覚えておいて後で整理すればいいと思っていると絶対に忘れます。繰り返します、絶対に忘れます。この辺りについては「標本の作り方」も参照してください。
重要・必読】持ってきた生き物を逃がしてはいけない
 私たちの周りにいる生き物たちは、日本中どこに行っても同じなわけではなく、土地によって顔ぶれが違います。そして、その土地の中でメンバーみんながバランスを取りながら (ある生き物だけが増えすぎたりせずに) 共存しています。人間が他の場所から生き物を持ってきてしまうと、こいつを含めてバランスをとることはできず、もとのメンバーが追いやられてしまいます。これが「外来種」の問題です。外来種はなにもブラックバスやアカミミガメのように国外からの持ち込みに限った話ではなく、国内であれ本来いなかったところに持ってきてしまえば「国内外来種」となります。どの生き物がどんな影響を及ぼすかを正確に予測することはおそらく不可能なので、とにかく生き物を動かすのはやめるべきと作者は考えます。「おばあちゃんの家に行ったとき採ってきたオタマジャクシがカエルになったから家の庭に放してあげよう」「旅行先で採ってきたイモムシがきれいな蝶になったから放してあげよう」というのは (作者も幼いころさんざんやりましたが) 生き物から見たら善ではないのです。
 その土地にいない種を持ち込むのはもちろんアウトですが、同じ種であってもよそから持ってきてはだめです。同じ種と言えど、住んでいる地域が違えば自由に交流できないので「遺伝子の違い」があります。これは目に見えて模様が違ったりする場合もありますが、多くは目に見える違いがありません。しかし、遺伝子が違うものを人間の手で混ぜ入れてしまうと、その群れがうまく続かなくなってしまう恐れがあります。例えば、同じ種でも東北に住んでいる群れは関東に住んでいる群れよりも冬の寒さに強いかもしれません。関東の個体が東北の群れに入ると、せっかく育んできた東北の「寒さに強い遺伝子」が純粋ではなくなり、寒さに弱くなって死んでしまう、ということが起こるかもしれないわけです。この例は適当に考えましたが、そういう危険がいくらでもあります。「ホタルのいる風景を取り戻すために、以前いたのと同じ種類をどこかから持ってきて川に放そう」というのもだめです。生き物が自力で移動してくる速さはとてもゆっくりなので自然も対応できますが、人の手で動かすと変化がとても急なので、ひずみが生じます。
 
 というわけで、採ってきた生き物は絶対に外に逃がしてはいけません。逃げる可能性のある飼い方・扱い方もしてはいけません。採ってきた生き物は「最終的に殺すか、死ぬまで飼い、死んだら標本か可燃ゴミにする」というのが責任です。「庭にお墓を作って埋める」というのも、道徳的には善に思えますが、よそから来た生き物にくっついた菌や細菌、ウィルスなどを土を介してばら撒いてしまう可能性が高いので作者はアウトと思っています。どれだけ好きだろうがどれだけ可愛かろうが「殺して標本にする、でなければ焼却する」、このルールを守れないなら生き物を採ったり飼ったりしてはならないと思います。これを貫きながらも道徳心を育むやり方だってあるはずです。万が一逃がしてしまった場合は猛省して対策を練りましょう。
 
 お説教したいわけではなく、この項目は自戒の意味が大きいです。
 
 
 
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